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産業保健情報

調査研究報告

メンタルヘルス職場復帰支援システム -CDを用いたメンタルヘルス支援便利帳-
1.はじめに
事業場において、衛生管理者はメンタルヘルス対策を担当する職種として重要視されており、産業医、管理者との連携により同対策をマネジメントしていくことが職務として期待される。特に、プライバシーへの配慮、職場復帰問題で困難さを訴える意見が多いことから、衛生管理者等のスタッフの育成支援、職場復帰手順に関する検討を重ねた。
2.目的
平成15年度調査研究「徳島県における産業医活動実態調査」により、メンタルヘルス対策への産業医の取り組み状況が明らかになったことを受けて、産業医、衛生管理者等の支援を行うことを意図して、平成16年度には「心の健康により休業した労働者の職場復帰のためのガイド」を作成し、平成17年度にはこの内容を模式化して各事業場の担当者が問題を抱えたときに推進センターに気安く相談したり、厚生労働省から発信される最新情報、県医師会産業医部会、職場のメンタルヘルスに取り組む精神科医グループ、障害者支援センターなどに連携をとる“要”としての推進センターの役割を知らせる目的でCD作成を試みた。
3.対象
メンタルヘルス不全者の中でも、気分障害(うつ病症状を訴え休業に至った者)による休業者の職場復帰支援対策を事例とした。
4.結果と考察
まず、平成15年度徳島県における産業医活動実態調査の結果では、産業医としての業務内容は健診結果判定が最も多く健診の事後措置に関することが産業医活動の中心で、健康相談や保健指導も高率で行われていた。事業場から相談を受ける内容としては「快適な職場環境づくり」「職場の禁煙について」が上位にあった。しかし事業場の衛生委員会への出席について、委員会がないと答えた人が30.4%、職場巡視をしたことがない人が44%おり、事業場との接点が希薄と思われた、また、平成15年度の調査時においては過重労働対策について知っている人は約6割で、通達通り事業場から時間外労働については情報が得られているかという質問には、約9割は情報を得ていなかった。
メンタルヘルスに関する相談を受けたことのある産業医は約3割であり、複数回答で「仕事に集中できない、根気がなくなった、ミスが増えた」が51.9%、「頭痛感、頭痛、肩こりなど」が29.3%、「欠勤が増えた」が40.7%で上位を占めた。対処方法については「管理監督者との話し合い」、「専門医(精神科医や心療内科医)を受診」がともに66.7%で最も多く、ついで「職場内での対処(環境改善や配置転換など)」、「しばらく休養をとらせた」でともに55.6%であった。メンタルヘルス教育については、「管理監督者教育を実施した」が37.0%、「従業員教育を実施した」が29.6%であった。
一方で「産業医自身が、今のところ必要性を感じていない」、「事業者として、今のところ必要性を感じていない」も、ともに22.2%で高率であった。産業医が活動する上で困っていることは、「自分自身の知識・経験不足」、また、「特に困っていることはない」と答えた人も同様に上位であった。
クロス集計の結果は、衛生委員会に出席し、職場巡視を熱心に行うなどの事業場とのかかわりを重視する人ほど事業所からメンタルヘルス相談を受ける割合が高く、また、相談を受ける割合は産業医としての経験年数や年齢に関係が見られなかった。

 この結果を受けて平成16年度から、センターの研修事業内容を工夫するとともに、推進センターの総力を挙げての取り組みを開始した。衛生管理者の集い(平成16年3月)を立ち上げ、日常業務である相談事業、産業医に対する一連のメンタルヘルス研修会への講師派遣、昨年度作成したガイドブックの配布も行った。

 ところで、ガイドブックを配布し、事業場の担当者に意見を求めたところ、事業場の実績に合わないとの指摘があった。
事業場の求めている事柄に対しての対応については、直接、推進センターに相談があった場合、相談内容に応じてセンター相談員から的競るな対策が講じられ職場復帰に結びつけた事例があっても、途中で職場の周囲の理解不足から再び休職する例もあり、メンタルヘルス不全者のフォロー、周囲の人たちの理解を求める教育等の必要性などの問題が浮かび上がってきた。まさに、各事業場にとっての問題点Hあ様々であって、ここに、産業医の事業場に対する接点を作り上げる努力の必要性を感じた。
また、産業医は、事業場においては事業主の責務が、業務に密接に関連を持つメンタルヘルス不全の防止にまで広がってきている現状を、きちんと理解しているかを確かめ、事業者が労働者の健康に関し基本的な考えを明示しておくことの必要性を強調し、就業規則の中に条文として取り入れるなど、企業に働く人の一人一人が考えるきかっけになることを伝えなければならない。
また、研修会の後に行ったアンケート調査によると(参加者61名、回答52名)メンタルヘルス不全者に出会ったことがあるかとの質問に73%が「はい」と答え、対応方法は、「上司に相談した」、「精神か、心療内科系への受診を勧めた」がそれぞれ23%、21%で上位を占めた。また「その他」の回答が34.6%で一番多く、「どうしていいかわからない」「上司がすでに対応中なので通常どおり接した」「すでに心療内科に通院し、薬も服用していたが、休みがちで勤務時も意欲が見られない」「同僚と話し合ったが、何も出来なかった」「仕事が忙しく、その人の対応まで気がまわらない」「自分の病状を離したがり、飛び降りるかもしれないとか、こんな仕事はいやとか、傾聴する側もストレスをもってしまう」「入院退院を繰り返し、主治医の先生との正確な交流が出来ていなかった」などの回答で、同僚は日常作業の中で相手との不自然さを感じているものの、どのように対応してよいか分からないことがうかがえた。
衛生委員会等で検討を重ね、メンタルヘルス対策を盛り込んだ安全衛生管理規定を作成し、問題が生じたときには、どこに相談に行ったらよいかを知る必要がある。

 平成16年に厚生労働省から心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引きが公表され、基本的な対応策が示されたが、医療現場では、まだ、所定の様式を持参する例は希である。今回CDを作成することによって、推進センター内にQ&Aの質問箱を設け、現場の抱えている問題点を浮き彫りにし、さらに、厚生労働省の手引き等の普及につなげたい。
5.まとめ
メンタルヘルスに関する対策が公表されているが、職場復帰の判断基準などは明示されていない。現場では関係者間の連携に不慣れで苦労している。担当者がプライバシー保護を理由に、多くの問題例を抱え込んでいることも見受けられる。専門家である産業医と情報を共有することによって、問題解決の方向づけをすべきと考える。


主任研究者 徳島産業保健総合支援センター 所長 中川 利一
共同研究者 徳島産業保健総合支援センター 相談員 大木 裕子
徳島産業保健総合支援センター 相談員 小谷 雄二
徳島産業保健総合支援センター 相談員 洲崎 日出一
徳島産業保健総合支援センター 相談員 横田 雅之
徳島産業保健総合支援センター 相談員 末善 良郎



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