3,3′-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)による健康障害の防止対策の徹底について

平成28年に、化成品等の製造事業場で、複数の労働者等に膀胱がんの病歴又は所見があることが明らかになり、これらの労働者等のうち多くは3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)を取り扱う作業に従事していたことが判明してから約2年が経過しましたが、上記事業場以外の事業場においても、MOCAを取り扱ったことのある労働者等に膀胱がん有病歴者がいることが把握されていること、MOCAは特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)の対象物質ですが、これらの事業場の中には、特化則の規定に基づき義務付けられている作業環境測定や特殊健康診断を実施していない等の法令違反が認められた事業場もあったこと、MOCAに係る作業環境測定について、より正確な濃度の見積もりが可能となる方法が確認されたことから、現在取り扱いのある事業場だけでなく過去に取り扱いがあった事業場も、改めて下記のとおり健康障害の防止対策の徹底を図るようお願いいたします。

現在もMOCAの製造・取扱いを行っている事業場(現在取扱事業場)は下記1から4まで、現在の製造・取扱いはなく過去にMOCAの製造・取扱いを行っていた事業場(過去取扱事業場)は下記2及び3について、実施をお願いするものです。


1 特化則に基づくばく露防止措置等の徹底(現在取扱事業場)
MOCAの製造・取扱いを現在行っている事業場においては、特化則に基づくばく露防止措置を徹底すること。
その際、設備的な対策のみならず、関係労働者の作業方法や保護具の着用・管理等についても必要な対策を講じること。また、経気道ばく露に限らず、保護手袋の着用や休憩室への入室の際の付着物の除去状況など、経皮ばく露や経口ばく露の防止措置も講じること。

2 特化則に基づく健康管理の徹底等(現在取扱事業場、過去取扱事業場)
現にMOCAを取り扱っている労働者及び過去に取り扱ったことのある労働者であって現在も雇用してい るものに対して、平成29年4月から施行された改正後の特化則に基づく特殊健康診断(膀胱がん等の尿路系の障害(腫瘍等)を予防・早期発見するための項目が追加されたもの)の実施を徹底すること。
なお、MOCAを取り扱ったことのある労働者であって既に退職しているものについては、今後、専門家の意見を聴取し、必要な措置を講じる予定としているが、それまでの間、特化則に基づく特殊健康診断と同様の内容の検査の受検を勧奨すること。

3 特化則に基づく記録の保存期間の延長(現在取扱事業場、過去取扱事業場)
膀胱がん有病歴者の中には、 MOCAへのばく露から膀胱がんの発症まで30年以上経過していると考えられる者も確認されたことから、MOCAを現在又は過去に製造し、若しくは取り扱ったことのある事業場においては、特化則に基づくMOCAに関する作業の記録、作業環境測定の評価の記録、特殊健康診断の結 果の記録について、法令上の保存期間(30年間)を経過後も、引き続き、保存すること。

4 当面の作業環境測定方法(現在取扱事業場)
MOCAの製造・取扱事業場に実施が義務付けられている作業環境測定について、より正確に濃度を見積もることが可能となる方法が確認されたことから、厚生労働省においては、MOCAの測定法の見直しのための検討を進めている。ついては、当分の間、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)に基づく 従来のろ過捕集方法に加え、別途示す米国労働安全衛生庁(OSHA)が示す方法を参考とした測定も併用することが望ましいこと。